行田のぞみ園ブログ

特定非営利活動法人行田のぞみ園のブログです。

分けっこの記憶

今日は行田のぞみ園はお休みです。お休みの日は、たまに絵本や本の話をしています。お時間のある方は、お付き合いくださったら嬉しいです。

 

今回は、お隣の韓国の優しい絵本。淡い色合いが印象的な、『わたしたちのケーキのわけかた』をご紹介します。

わたしたちのケーキのわけかた

「わたしたちは 5にんきょうだいです」という一文から始まる絵本には、5人兄弟の、分けっこの日々が生き生きと描かれていきます。

5人もいれば性格は見事に様々、がやがやわいわい。この臨場感はどうしたことかと思ったら、実際に作者のキムさんは、5人きょうだいの次女なのだとか。なるほど、納得です。

 

初めはケーキ、牛乳1パック、りんご、お菓子、タコさんウィンナー...みんなみんな、5人で分けっこするのは「なかなか たいへん」。計算の力、アピール力、素早さに、何より諦めない気持ち。5人兄弟は、いつだってどうやって分けるか、どうやったら自分の欲しいところをもらえるかを、常にパワフルに考えていなければなりません。そして起きる、「思いがけないこと」。

 

腹が立ったり、泣いてしまったりする日もあるけれど、誰よりも心配して、誰よりもお誕生日の歌を大きく歌いたくなる特別な関係。分かち難いのが、「きょうだい」でもあります。分け合うともちろん量は少なくなるけれど、一緒に食べたら2倍も3倍も、はたまた5倍もおいしくなる幸せを、絵本の子どもたちはもう知っているのです。

 

描かれているように、「分けっこ」ができない時間ももちろんあるし、5人が大人になっていけば、きっと一人ひとりになる時だってくるでしょう。でも、その日までは「分けっこ」の日々は続いていきます。うんと長いようで、きっと思い返せば短い日々です。

大人になった時、このわいわいがやがやした記憶は、この5人の中にとぷんと沈んで、寒くて耐えられない時に、誰かを温めることでしょう。これはかけがえのない、記憶のお話でもあります。

 

絵本冒頭にある「献辞」を読むと、大人は多分、皆さん少し泣いてしまうかもしれませんね。良い絵本です。ぜひ。