こんにちは。
今日は行田のぞみ園はお休みです。お休みの日は、たまに絵本や本の話などをしています。お時間のある方はお付き合いください。
毎日暑いと、帰宅してからはすぐお風呂につかりたくなってしまいますね。
毎日汗を流してお風呂に入ることができることが当たり前ではなく、むしろとんでもない贅沢であることを知ったのは、初めて海外に出かけた時かもしれません。
そう考えると、今日ご紹介する絵本は、日本特有の絵本なのかもしれませんね。
みんな大好き、『おふろだいすき』です。
子供達は、たいていお風呂に入るまでに一悶着がありますね。中には「入らない!」という子もいるかもしれません。そんな子供たちのために描かれたのかな、と思う一冊でもあります。
お風呂に入る「ぼく」は、今日もあひるのプッカとお風呂を楽しんでいます。「あつくもなし、ぬるくもなし、ちょうどいいかげん。」と、プッカとお湯をかけ合った「ぼく」。ごしごし体を洗っていると、プッカがなんと、おふろのそこに、大きなかめを見つけてきて...。
ぱかっとふたを取ると、もうもうと湯気の経つお風呂。裸の状態でお湯に浸かると、湯気がもくもく、次第に自分と世界の境界線があいまいになり、全てがお湯に溶けていくような心地さえ覚えます。お風呂には、そんな魅力がありますね。
境界線がぼやけた世界では、むしろ、カメもペンギンもおっとせいも太ったかばも、大きなクジラも、お風呂に現れてしかるべきなのかもしれません。
小さなお風呂だったはずの場所が、大きな動物たちが現れるたびに、湯気のあふれる大きな大きな空間になっていく、幻と夢のあわいの空間。その無限の広がりを、読み終わった後のひとときのように、実に心地よく感じられる一冊です。
小さな「ぼく」にだけ現れる動物たち。でも、大人になっても、目を閉じて、湯船の底から彼らがやってきてくれないものか。そんなささやかな夢想を、この絵本はそうっと包み込んでくれるような気がします。