行田のぞみ園ブログ

特定非営利活動法人行田のぞみ園のブログです。

いままでも、これからも

こんばんは。

今日は気持ちの良い秋晴れでしたね。あともう少しだけ、こんな秋日和が続いてほしいなあ、と願うばかりです。

今日は行田のぞみ園はお休みです。お休みの日は、絵本や本の話などをしています。お時間のある方はお付き合いください。


お隣の教会はもう少しで棟上げを迎えるそうです。隣の窓から見ていただけですが、家の基礎からそこに建物を建てるまで、こんなに複雑で丁寧な工程があるんだなあと、改めて思わされました。

皆さんは、理想の家や空間はありますか?いつかこんな家を作りたい、自分だけの素敵な空間を持ちたいなど、夢はふくらむものですね。絵本や本の中には、理想の家や空間がたくさんあります。

今日は『ちいさいおうち』をご紹介します。

 

ちいさいおうち

綺麗な壁、素敵な窓と玄関。全ては小さいけれど、丈夫でしっかりしたつくり。静かな田舎に、「ちいさいおうち」は建っています。りんごの木や畑に囲まれたちいさいおうちは、お日様が上り、また沈むのを眺め、夜には星の光、月の明かりに優しく照らされます。ゆっくりと季節の流れを感じ、時の重なりを穏やかに楽しんでいたはずなのに、いつしかちいさいおうちのまわりには、たくさんの高い建物、工場、電車が増えていきます。静寂の代わりに喧騒が、太陽と月の代わりに電気の明かりが、取って変わっていくのです。

 

周りの環境が変わる中でも、ちいさいおうちはこちらが心配になる程変わらず、可憐に、しかししっかりと建ち続けています。でも思うのは、遠い日の田舎の静けさ、太陽と月の明かり、繊細に移り変わる季節ごとの風と音だったのでしょう。ちいさいおうちの孤独、悲しさは、子供たちにも痛いほど伝わります。泣くことのできないちいさいおうちの代わりに、読み手である子供たちがきっと何人も何十人も何百人も、心を痛めたことでしょう。

 

小さなころは、ちいさいおうちは一体どうなってしまうんだろう、という不安と悲しさを持って、最後の成り行きにとてもほっとしたのを覚えています。

 

この本は、現代的な進化、環境破壊への警鐘など、様々な位置付けをされやすい一冊でもありますが、そういった大人の思惑を超えて、とにかくとても美しい絵本である、ということも、時を超えて愛される理由ではないでしょうか。

 

バージニア・リー・バートンの繊細で可憐なタッチで描かれる時や季節の重なり、失われゆく時の中で踏みとどまり続ける、ちいさいお家の、確かな存在感。全てがとても美しく、はっと胸をつきます。

どんなに時が重なっても、大人になった私たちの胸の片隅に、ちいさいおうちが建っていてほしい。そんなことを思う一冊です。