行田のぞみ園ブログ

特定非営利活動法人行田のぞみ園のブログです。

やわらかな時間

今日は行田のぞみ園はお休みです。お休みの日は、たまに本や絵本の話などをしています。 お時間のある方はお付き合いください。

 

梅雨入りのはずなのにこの暑さ。気持ちが少しだけめげてしまいそうになりますね。

自分の子供だった頃のことを考えると、夏は窓に葦簀(よしず)を立てかけていれば、家の中でもずいぶん涼しかったように思います。
日本の夏はどんどん過酷になっていくようですね。

 

 今日は本でも絵本でもなく、珍しく漫画のご紹介なのですが、ウルバノヴィチ香苗さんの『まめで四角でやわらかで』をご紹介します。

惣菜屋、ところてん売り、油売り…今日も江戸の町では商いが営まれ、人々は慎ましく日々の暮らしを重ね、食べることを楽しんでいます。

 

特筆すべきはいっぱいあるのですが、やっぱり出て来る食べ物が全部おいしそうなところでしょうか。とーっと音を立てる油、つるつるとひんやりしたところてん、甘いキンピラに、朝餉の準備で焚かれるお米。おいしそうな匂いが、確かにページのあちこちから立ち上っています。生活や季節の気配が柔らかく画面を彩り、「かつてあったかもしれない」場所で、「かつていたかもしれない」人々の日常が語られていきます。

 

揺れる日差し、傘から滴る雨、煮炊きの香り、飛脚の汗と一陣の風と。
季節のわずかなうつろいと、なんでもない一日のきらめきが見事に写し取られた作品で、惚れ惚れしながら読み終えてしまいました。続刊が待ち遠しい作品だと思います。

 

夕立の前の土の匂い、降りしきる雨の涼しさを、ひやりと感じる一冊でもあり、ちょっと気持ちがめげてしまいそうな、今の季節にぴったりかもしれませんね。