行田のぞみ園ブログ

特定非営利活動法人行田のぞみ園のブログです。

はいたはつらい

こんばんは。

今日は少し肌寒い1日でしたね。皆さんはどんな1日を過ごされましたか?

行田のぞみ園は本日お休みです。お休みの日は、たまに絵本や本の話などをしています。お時間のある方はお付き合いください。

 

さて、先日、ワニや猿や、蛇をたくさん見る機会がありました。そこには、眠っているのか、水の中で微動だにしないワニたちがたくさんいたのですが、表示の説明に描かれているワニの獰猛性を読むにつけ、その開かない大きな口が恐ろしくなり、遠巻きの見学をしてしまいました。そんな中、思い出したのがこちらの『わにのはいた』です。

「どうも、はいたらしい」と、歯の痛みを覚えた、わにのアリ。はいしゃへ行かないといけないのに、「はいしゃ」のことを考えると、涙が出てしまう、心優しいアリ。なんとか痛みをやり過ごそうとしますが、とうとう耐えきれず、動物園の園長先生に見送られ、バスに乗って歯医者さんへ向かうのですが....?

 

歯の痛みは万人に共通する苦しみの一つ。本の冒頭から、こんなに強面のワニが、歯の痛みにうんうん苦しんでいると、なんだかとても気の毒になってきます。子供たちもきっと、「かわいそうだなあ」と眉を下げながらアリに共感してしまうのではないでしょうか。

 

作中で、歯痛に苦しむワニへ差し入れられるのが、暖かいミルク、1冊の絵本、というのもなんとも可愛らしく小粋です。何より、歯医者さんへ行くのにバスに乗るワニ、というシーンも、意表をついてコミカルですね。先が読めるようで読めない、とぼけた展開が続きます。

アリはバスの中である一つの出会いをし、そこからさらにお話は進んでいくのですが、いつでもどこでも、きまって歯の痛みは忘れた頃に顔を出し、アリを苦しめるのでした。「早く歯が治ればいいのになあ」と、読み手は気の毒に思ったり、はらはらどきどき。ワニのアリは、果たして歯医者さんへ行けるのか、歯の痛みは虫歯なのか、どうなのか。

 

白地に緑の色だけが引かれる挿絵もとてもおしゃれで、初夏の雰囲気をなんとなく感じられる一冊。一匹の気弱なワニが出会う、新しい友情がさわやかにあとを引きます。