こんにちは。
今日は行田のぞみ園はお休みです。お休みの日は、たまに絵本や本の話をしています。お時間のある方はお付き合いください。
旅行の計画を綿密に立てることもありますが、大体、頭で考えたようにうまくいく、ということは一度もありません。天候やさまざまな事情、人との出会いなどで、計画は大体崩れ去り、行きたいと思うところにたどり着けないこともままあります。思い通りにならなかったこと、しんどかったこと、行けなかった場所。それがなぜか、後で見返せば忘れがたく笑ってしまう記憶になることもあるのだから、旅とはままならず、流動的で、不思議なものだと思います。
旅に出る。
この一言には、いつもどこかふつふつとした高揚と、染み入るような寂しさが同居している気がします。
みやこしあきこさんの、「ぼくのたび」は、「ここは ぼくのホテル」という一言で始まる、ぼくの物語。
小さなホテルで、世界中からのお客さまを迎える「ぼく」は、今日も明日もホテルにいて、行ったこともない、みたこともない場所からきたお客さまの話を聞き、お客さまにも、自分の住んでいる小さな町の話を聞かせます。
変わらない毎日の中、「ぼくは」夢を見ます。「おおきなかばんをもって」「しらないまちから しらないまちへ」と旅する、自分の姿を。
夢の中の柔らかい色彩は、ぼくの憧れのようでもあり、同時にページをめくる私たちの憧れそのものであるかもしれません。いつも旅人を見送る「ぼく」は、けれどいつか見送られる旅人にもなるのでしょう。
みやこしさんの作品を紹介するのは2冊目ですが、今回も影と色彩の柔らかさはますます際立っているような気がします。ここではないどこかへの、柔らかい渇望はきっと誰でも抱えているのではないでしょうか。いつか、「ぼくもう行かなきゃなんない」と思い立ち、荷造りを始める時は、「ぼく」だけでなく、私たちにもやってきます。
その時を思いながら、私たちは今日も日々を重ねていくのでしょう。