こんばんは。
雪がほんの少しひらひらと舞っていました。寒い1日でしたね。皆様も暖かくしてお過ごしください。
先日、遠いところに雪が積もったと、画面越しに真っ白な雪景色を見ることができました。美しい光景でしたが、もちろん雪の冷たさや、しんしんと降る雪の音は画面越しに感じることはできません。どこか惜しいような気持ちになりました。
今日ご紹介する絵本は、「旅の絵本」シリーズです。
一冊ずつ、ヨーロッパを皮切りに、旅人が世界各国を巡る大人気シリーズです。
とても小さな頃にこの絵本を初めて開いた時は、「文字がなくて風景ばっかり書いてある」とどこか物足りなく、ぱらぱらと足早にめくって終わってしまった記憶があります。でもこの絵本は、さっとめくるだけでは「読んだ」ことにはならないのです。一ページ毎にじっと目を凝らして、この絵本を本当に大好きになったのは、もう少しだけ大きくなってからでした。
一人の旅人が小舟で浜辺にたどり着き、長い旅は始まります。
どこか懐かしい草原、石造りの町並み、喧騒溢れる大都会。その風景の中には、おとぎ話の登場人物や歴史上の人物たち、その土地に生きる人たちがひょっこりと顔を出しています。旅人はその傍らをいつもひっそりと通り過ぎていきます。
緻密に描かれた風景は、くすりと笑ってしまうようなおかしみ、ぎゅっと苦しくなるような懐かしさにあふれています。気がつけばページをめくる私たちも、旅人と一緒にこの風景の中に隠れんぼしているような錯覚すら覚えます。もしかしたら、錯覚では無いのかもしれませんね。
目を凝らしてページを追うと、草原を渡る風の音、石造りの街道を渡る子供達の笑い声、大都会の人々の活気が聞こえてくるようです。思わず耳を澄ましたくなる、稀有なシリーズです。
旅人はいつでも、ページをめくればそこにいます。
先日、作者のご訃報を耳にしました。新しい旅路がどうぞ安らかでありますように。