行田のぞみ園ブログ

特定非営利活動法人行田のぞみ園のブログです。

メトロポリタン美術館

こんばんは。毎日暑い中ですが、いかがお過ごしでしょうか。

 

今日は行田のぞみ園はお休みです。お休みの日は、絵本や本の話などをしています。お時間のある方はお付き合いください。今日は、とある少女と美術館のお話です。

 

家出先はメトロポリタン美術館

現代の、最新鋭のセキュリティに管理された美術館ではおそらく遂行不可能なミッションでしょう。本作は、それが可能だった「古き良き時代」の女の子のお話、『クローディアの秘密』です。

 

とても退屈だったクローディアは、ある日家出を思い立ち、弟を協力者に、二人でメトロポリタン美術館に向かいます。

どうやってメトロポリタン美術館に忍び込み、見つからずに夜を越し、家出を遂行し続けることができるのか。荒唐無稽な筋立てなのに、どこかリアルで地に足がついているのは、クローディアの悪知恵もとい綿密な計画のためかもしれません。夜のメトロポリタン美術館で、息をひそめて隠れるクローディアたちの緊張は、こちらにも伝わってくるよう。ずっと溜めていた貯金を、姉の計画のために巻き上げられる弟の姿には、いつの世も弟は大変な生き物だな、と同情してしまいますが...。

 

 

この壮大な家出は展示品である天使像の抱える謎、とある資産家の手紙、と思わぬミステリーの要素をどんどん巻き込んでいき、ぐいぐいと読み手を引き込んでいきます。

 

もう子供ではいられなくなる時を迎えようとしているクローディア。はかない、今だけの冒険の時間を、カニグズバーグは浮き足立つことなく、丁寧に描写していきます。カニグズバーグの描く少年少女はどことなく天衣無縫、突拍子が無く、可愛げがなく知恵が回り、そしてとても魅力的なので、ぜひ他の作品もお読みになってください。

 

この作品で、メトロポリタン美術館を知り、その響きにときめきを覚えるかつての読み手も、たくさんいるのではないでしょうか。私もきっと、その一人です。