行田のぞみ園ブログ

特定非営利活動法人行田のぞみ園のブログです。

赤いオーバーと女の子

こんばんは。今日は三日月の夜ですね。

行田のぞみ園はお休みです。また明日から、よろしくお願い致します。

さて、お休みの日は絵本のご紹介などをしております。お時間のある方はお付き合いください。今日は赤いオーバーと女の子のお話を...。

アンナの赤いオーバー

「戦争がおわったら、あたらしいオーバーを買ってあげようね」と、去年の冬、お母さんがアンナにかけた言葉から始まる一冊。

 

しかしやっと戦争が終わってもお店は空っぽ、お金も物も食べ物もなくて、相変わらずアンナの持っているオーバーはすりきれています。赤いオーバーが欲しいという娘の願いを、お母さんはどうやって叶えるのでしょうか。まずは羊の毛を刈り、毛を紡いで、というところから始まるのには、もしかしたら今の子供たちはびっくりするかもしれませんね。

 

 

金時計やランプ、ネックレス。わずかに家に残った物たちと引き換えにして、いろいろな人たちの手を経ながら、アンナの赤いオーバーは、ゆっくりと時間をかけて出来上がっていきます。春に羊の毛を刈り、糸を紡いでもらい、夏の終わりには糸を赤く染めるコケモモを摘み...と、冒頭の戦争後の灰色の街並みとは一転して、色鮮やかな世界が描かれます。着実に一歩ずつ、アンナの願いが叶っていく様は、読んでいると心が踊ります。これは再生の物語でもあるのだろうと、静かに読み手は感じ取っていくかもしれません。

クリスマスに出来上がったアンナの赤いオーバー。もしかしたらアンナは袖を通す度に、春まで羊の毛が伸びるのを待ったこと、お母さんとコケモモを摘んだ夏の森の匂いを、糸を紡ぐ糸つむぎのおばあさんの手を、何度も思い出すかもしれません。長い長い破壊の後に、多くの人の手で作られた赤いオーバーは、この後もずっと、アンナという少女を幾度も温め続けたのではないでしょうか。実話を元にした一冊。クリスマスに読みたい一冊でもあります。