こんばんは。
日曜日、月曜日は、行田のぞみ園はお休みです。お休みの日は、たまに本や絵本の話などをしています。お時間のある方はお付き合いください。
台風が近づいているというニュースに、やはり落ち着かない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
でも私たちは、昔の人たちのように、毎日空を見上げたり、風や空気の湿り気で天気を予想するという苦労からは無縁ですね。気象予報士の方たちが出した天気の情報を毎日当たり前のように享受していることは、昔の人々からすればまさに魔法、奇跡に等しいことです。
振り返ればもう遠い時代に、南の果て、雪の大地の果てまで大冒険をし、何よりも天気に翻弄された男たち、そして犬たちがいます。今日は『シャクルトンの大漂流』をご紹介します。
1900年代は、スコットとアムンセンの南極点到達レースに代表されるように、南極探検英雄時代とも言われています。
アーネスト・シャクルトンもまた、アイルランドで生まれ、イギリスの南極隊を3度も南極へ率いました。その中でも彼が語り続けられているのは、この本に取り上げられている、エンデュアランス号の大漂流と奇跡の生還によるものです。
華々しく南極へ向かう、シャクルトンをリーダーとした28名の探検隊。彼らの乗る船は、流氷に閉じ込められ、携帯電話も衛星も何もない時代に、極寒の大地に取り残されてしまいます。
この本のユニークなところは、探検隊の一人一人とその持ち物、そして犬たちまで、スケッチ風に、リストアップされているところです。隊員たちをフルネームで紹介し、犬たちまで、一匹一匹描き分けているところは、とても遊び心があり、かわいらしくてお見事。凄惨で過酷な成り行きを迎える犬たちへの真心も感じ、心が熱くなります。
雪と氷の大地で、シャクルトン一行がどう生き延びるのか。固唾を飲んで見守ってみてはいかがでしょうか。
大判で美しい作りの本で、プレゼントにもおすすめです。
シャクルトンはその一生を順風満帆に過ごしたわけではなく、死後に評価が徐々に上がってきた人物でもありますが、とにかく部下の隊員たちにはとても愛されていました。この本一冊をとっても、彼がどんな危機の時にもユーモアを忘れず、なにより希望を捨てなかったことが伝わってきます。
何の情報もない、絶望が忍び寄ってくる状況で、それでも諦めないこと、希望を絶やさずに、部下たちを全員家に帰らせたシャクルトン。これは28人の男たちの、奇跡の無い時代に「全員帰還」という最大の奇跡を成し遂げた物語でもあるのです。