行田のぞみ園ブログ

特定非営利活動法人行田のぞみ園のブログです。

「あなたの神さま」

こんばんは。

今日は行田のぞみ園はお休みです。お休みの日は、絵本や本の話などをしています。お時間のある方は、お付き合いください。

 

今日は、意思と想像力を握りしめて戦う女の子、エミリーのお話を。

L・M・モンゴメリーといえばもちろん『赤毛のアン』シリーズが挙げられますし、大好きなのでそちらもお話ししたいのですが、今日は『エミリー』を。

 

上巻は、たった2人で仲睦まじく暮らしていた最愛の父を失い、親戚のいるニュームーン農場に引き取られたエミリーが、新しい生活と友を得ていくまでのお話です。

 

エミリー(上)

赤毛のアン同様、こちらのエミリーも想像力がたくましく、自分の感情を豊かに表す女の子ではありますが、アンとはまた違った方向で、愛すべき「くせ」のある女の子です。「書く」ということに自分を捧げていく、という点でも、モンゴメリに大いに重なるところがあります。

 

時には激しい感情表現で、自分の最愛の人を侮辱する親戚に怒ったり、テーブルの下に忍び込んだり、自分を傷つける女の子をきちんと嫌いになってやり返すなど、エミリーはとにかく果敢な子。傷つきやすく、誇り高く、自分の空想の世界に何人たりとも立ち入れさせない、という確固とした意思があり、読み返しても惚れ惚れします。

 

この手負いの獣のような女の子をそれぞれに見守る、3人のおじさんおばさんたちのキャラクターも、それぞれに魅力があってとても見事。一族の厳格さを全て煮詰めたような、エリザベスおばさんとの一歩も引かないやり取りも読みどころでしょうか。

 

モンゴメリー作品の優れたところは、もちろんカナダの美しい自然描写も挙げられますが、何よりも、一見近寄りがたそうに見える登場人物たちが、主人公が年を重ねるごとに深みと陰影を増していくところでしょうか。人はいつだって思いもよらない、という視線の温もりに、ほっとします。

 

優れた児童文学というものは、年代を重ねても、視点を変えてその作品世界を縦横無尽に楽しめるものですが、モンゴメリー作品が時を超えて愛されるのも、その要素を備えているからこそではないでしょうか。

 

作中でよくエミリーが、「あなたの神さま」「私の神さま」と、神さまのことを語るのも、とても印象的です。「おばさんの神さまはとっても意地悪だけど、私と父さんの神さまは違うのよ」と生き生きと語るエミリー。これもまた、モンゴメリーの本音ではないでしょうか。

 

余談ですが、アンシリーズの中でも、教会の小さなコミュニティの中で繰り広げられるいさかいや噂話、ちょっとしたいがみあいの描写などがとにかくお見事。モンゴメリー自身も牧師の妻であったことを思うと、おそらく何かしらの実体験も込められているのでは?と思っています。見聞きした軋轢や(おそらく)ストレスを、見事に愛すべき要素として作品に活かすモンゴメリーのガッツに、エミリーの小さなたくましい姿が重なり、いつもふふふ、と笑ってしまいます。