こんにちは。
今日は一際寒い1日になりましたね。師走を迎えると、日々があっという間に感じます。カタールの時間に合わせ、連日寝不足、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。いよいよ試合も近づいてきました。頑張りが報われる時でありますように。
今日は行田のぞみ園はお休みです。お休みの日は、絵本や本の話などをしています。お時間のある方はお付き合いください。
クリスマスも近づき、本を贈る機会も増えてきましたね。12月は、贈り物にぴったりな絵本をご紹介できたらと思います。
たしろちさとさんの、おいしさと温かさたっぷりの絵本、『せかいいちまじめなレストラン』を今日はご紹介したいです。
レストランの2階に住んでいるイタメーニョさん。とってもまじめなイタメーニョさんは、毎日朝のきっかり7時に起きて、目玉焼きをトーストに乗せた朝ごはんを食べます。お天気がどんなに違っていても、イタメーニョさんの朝はいつもおんなじ。
いつも床をぴかぴかにみがいてくれるスミス夫人と一緒に、イタメーニョさんは今日もお店を開き、お客さんが次々にチリン、チリンとドアを開けます。
徹夜明けだったり、大家族のお誕生日のお祝いだったり、お母さんに怒られて泣いている子だったり、イタメーニョさんのお店に来るお客さんはさまざまです。でも共通しているのは、とにかくおいしくてあったかくて、ほっとするものやわくわくするものを食べたいということかもしれません。
そんなお客さんのご要望に、イタメーニョさんはただただ真剣に応えていきます。ページをめくるたびに、「まじめな」という言葉を体当たりで表現するイタメーニョさん。イタメーニョさんはいつだって、お客さんに「おいしいものを食べてほしい」という気持ちだけで行動しているのです。「ああ、おいしすぎて、きぜつしそう」とうっとりしたり、笑顔でお料理を頬張るお客さんたちを見守るイタメーニョさんの表情は、この絵本の見どころの一つだと思います。ぜひ、ほんの少しの変化も見逃さないでみてください。
「まじめだね」という言葉に、揶揄や棘が混ざっていくのはいつからなのでしょう。しかし本来、「まじめ」という言葉には「真心をこめる」「誠実である」という意味があります。イタメーニョさんのように、常に誰かのことを考える優しさが、「まじめ」という言葉の芯なのかも知れません。
もしかしたら子供たちが「まじめだね」と言われた時の空気や含みに傷ついてしまうような時、どんな時でも美味しい料理を届けるためにせっせと奮闘するイタメーニョさんと、お客さんの笑顔をふっと思い出してもらえたら、その言葉にこめられた冷たい響きも溶けていくような気がします。ぜひ、そうであってほしいな、と思います。
暖かくて、贈り物にふさわしい、とても優しい絵本です。
ちなみにイタメーニョさんのお店のメニューをちょっと覗いてみると...「はなよめさんのスープ」、「ヤンソンさんのゆうわく」、「あなのなかのヒキガエル」などなど、とっても面白い名前が並びます。実はこの料理は全て実在する、各国の料理。風変わりな響きに子供たちが興味を持ったら、一緒にレシピを調べて作ってみるのも、とても楽しいかも知れません。個人的なお勧めは「ヤンソンさんのゆうわく」です。