行田のぞみ園ブログ

特定非営利活動法人行田のぞみ園のブログです。

かんむりの上には

こんばんは。今日からぐっと冷えたような気がしますね。

行田のぞみ園は、今日までお休みとなっております。また火曜日から、よろしくお願い致します。お休みの日は、たまに絵本や本の話などをしています。お時間のある方はお付き合いください。

 

歳をとると1年が瞬く間に過ぎていく、と聞いたことがありますが、次第にそれを実感するようになってきました。

大人のための絵本、という言葉はあまり好きではありませんが、しかし、大人になってから読むと、より響いてしまう絵本というものがあり、今日ご紹介する『ジオジオのかんむり』も、そのうちの一冊になるでしょうか。

 

「らいおんの なかでも いちばん」つよかったジオジオ。その証のかんむりを見ると、今もこそこそと動物たちはかくれてしまい、ジオジオには話し相手が誰もいません。水面に映るのは、白髪が生えて、目も霞む自分の姿。「だれかとゆっくりはなしてみたく」なったジオジオに、はいいろのとりが、「ジオジオのおうさま、つまらなそうですね」と話しかけてきます。とりのなやみに、ジオジオはあるていあんをするのですが...?

 

 

「ジオジオさんがかなしくなくなって、良かったね」というのが、小さな頃に読んだ初めの感想だったような気がします。今またページを開いて見ると、ジオジオというライオンのちょっと疲れた眼差し、しおれた姿、そして何よりもその底知れない孤独がより生々しい手触りとなって眼前に迫ってくるようで、少したじろいでしまいました。しかし同時に、その寂しさをぎゅっと抱きしめる、そんな力強い優しさも感じる一冊です。

 

かつては強く、周りを凌駕していたであろう森のライオン、ジオジオ。しかし老いの前には、誇りと力の象徴だった冠も虚しく、ジオジオをより孤独にする「呪い」でしかありません。しかし、この一冊は、そんな王者の呪いを、小さないのちを守る魔法に変えていくのです。ジオジオを孤独にしていたかんむりは、けれどはいいろのとりと、その赤ちゃんたちを確かに守ります。ジオジオの歩んできた王者への道は決して無駄ではなかったのだという成り行きには、老いと孤独への返答として圧倒的な優しさがあります。強さと優しさは両立するのです。

 

と、大人になるとどうしても語りたくなってしまう一冊ではありますが、さみしいライオンさんととりさんが仲良くするお話、というシンプルな絵本でもあります。あまり余計なことを考えず、「ジオジオ、良かったねえ」とただ思うのが、一番かもしれません。

ジオジオの耳に、いつまでもことりたちのこえが届きますように。