行田のぞみ園ブログ

特定非営利活動法人行田のぞみ園のブログです。

つるばら村の「三日月屋」

こんばんは。

今日はすっかり春の陽気。花粉も舞っていたでしょうか。くしゃみが止まらない1日でした。

今日は行田のぞみ園はお休みです。お休みの日は本や絵本の話などをしています。今日は久しぶりの更新となります。お時間のある方はお付き合いください。

今日は、小さな村の小さなパン屋さんのお話です。

 

つるばら村のおばあさんの家に引っ越してきたくるみさん。農家だったその家で、宅配のパン屋さんを始めました。昔外国を旅した時に見た、「赤いれんが屋根の小さなお店」。いつも焼き立てのパンの香りがして、小さな町や村に溶け込んでいるようなパン屋さん。くるみさんの目指しているパン屋さんは、そんなお店です。

 

最初の一週間こそお客様でいっぱいでしたが、次第に注文は途切れがち。そんなある日、台所のドアにはノックとともに、古いレコードと蓄音機、小さなつぼが置かれていました。

 

パンの注文を待ち望むくるみさんの元に飛び込んでくるのは、一風変わったお客様やパンの依頼。しかし彼らもまた、隠れてはいるけれど、れっきとしたつるばら村の住人なのでしょう。パンが媒介となって、くるみさんの世界が裏返るように広がっていく様子に惹きつけられます。

 

たんぽぽのハチミツのパン。

ドングリの実のパン。

たっぷりバターを織り込んだ三日月パンに、朝つゆや夜つゆを使って焼かれるパン。

木の実やドライフルーツ、ジャムに彩られるどっしりとしたクリスマスパン。

かつぶしの入った、煮干しを乗せたあんパン(こちらは好みが分かれそう)。

花の香りの、小さな小さな春のパン。

 

くるみさんに依頼されるパンは、どれも、「どんな味なのかな?」とその味わいを想像する楽しみがあります。どのパンを、どんな「お客様」が依頼したのか。ぜひ、読んで確かめていただけたらと思います。

なお、花のジャムパンで締め括られる本書は、ちょうど今の季節にもぴったりかもしれません。

焼き立てのパンの匂いで笑顔になるのは、人間だけではないのかもしれない。そう信じたくなるような、温かさが漂う一冊です。